ヒトの身体には「背骨」と呼ばれる、頭蓋骨から骨盤まで連なる硬いブロック状の骨がある。
これを「脊椎」と言う。この脊椎に守られるように入った、脳からの命令をコントロールする
神経が「脊髄」である。
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手足を動かす命令系統(運動神経) |
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A |
手足からの感覚を伝える経路(感覚神経) |
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B |
自律神経の中枢(a-内臓を動かす b-体温調整(発汗)を促す) |
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脊髄損傷」とは《急激な圧力を受けたために脊髄が折れたり、切れたり、周囲の血管が
圧迫され血行不足を起こしたりすること》である。 |
脊髄が破壊されると様々な知覚、運動機能がマヒする。
脊髄損傷の原因で一番多いケースが、交通事故や転落事故による外傷である。
他には病的な原因がある。例えば腫瘍、脊椎や脊髄に表れ、圧迫、浸潤して血行不良にる機能不全
を引き起こす。
また、加齢によって靭帯(椎体と椎体をつなぐもの)が変形する「後縦靭帯骨化症」も脊髄損傷の
原因のひとつ。
脊椎と脊椎の間には繊維状とゼリー状のクッションがあり二重構造になっている。(ヘルニア)
このクッションが飛び出して脊髄を圧迫するので、これも脊髄の障害。
破壊された脊髄組織を再生させるのは、現段階では不可能。
そのため、脊髄損傷による知覚や運動マヒは続く。
脊髄は、頚髄節、胸髄節、腰髄節、仙骨節(尾骨節)によって構成されている。
髄節によって、そのコントロールしている機能が異なるので、損傷した髄節の部位によってマヒの
度合が異なる。
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頚髄を損傷した場合・・・ |
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両手、両足、内臓、呼吸器系へのマヒが表れる。(四肢麻痺) |
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胸髄以下を損傷した場合・・・ |
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両足、一部内臓のマヒが表れる。 |
一般的に「損傷部位が頭に近いほど、障害が重い」と言われている。
また、脊髄は断面部位によっても制御できる機能が異なるので、損傷の度合により、表れるマヒの
度合も異なってくる。
例えば、脊髄への圧迫が強く脊髄が完全に破壊された場合は、損傷部位以下の運動、知覚機能は
完全にマヒする。(完全麻痺)
一方、脊髄への圧迫が弱く脊髄の断面の半分が破壊を免れた場合は、完全ではないにしろ
機能を果たすことが出来る。(不完全麻痺)
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マヒによって生じる「合併症」・・・特有の病的症状 |
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手足の運動障害 |
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A |
循環器障害--- |
自立神経系の問題により、血管をスムーズに収縮、拡張が出来ない。 |
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B |
消化器障害--- |
立神経系の問題により、胃腸の内分泌液に支障が出る。 |
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C |
呼吸障害----- |
胸や肩の筋肉を使った努力性の呼気、吸気が出来ない。 |
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D |
排尿障害----- |
自己排尿が出来ない。 |
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E |
褥瘡(床ずれ)- |
知覚がないため圧迫により体の接触面が壊死してしまう。 |
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F |
拘縮-------- |
関節を構成する筋肉などの軟部組織が収縮性を失う。 |
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G |
異常性骨化--- |
無理な関節運動により関節中に骨が出来てしまう。 |
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H |
体温調整障害- |
自立神経系の問題により、発汗作用がない。 |
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I |
性機能障害--- |
勃起障害 |
リンク : Wikipedia:脊髄損傷
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